文学フリマ続報のお知らせと備忘録、そして宣伝を兼ねて、本を作る過程を記事にしてみたいと思う。そういう話を読むのは私自身好きであるし、誰かの役に立たないとも限らない。
今回、制作するのは「日記本」である。私の三ヶ月間の日記を一冊にまとめたものだ。本をデザインする時に大事なのは「装丁が内容に見合っているのかな」などと一瞬でも考えないことである。
私は DTP のど素人なのだが、本当のど素人はそもそも個人で本を作るという経験をしたことがないと思われる。したがって記事タイトルはアマチュア(愛好家)とした。
前置き
0. 前提
制作には InDesign を使う
今回作るのは文章のみの本であるから、当初は一太郎で十分かとも思っていた(実際に一太郎で文庫サイズの本を作ったこともある)。
しかし、一太郎だと本文はともかく扉や目次、奥付等のレイアウトが面倒であること、細かくフォーマットを決めたい場合には力不足であること、またメインマシンが一太郎非対応の Mac であることから InDesign を使うことにした。一ヶ月で五〇〇〇円(月間プランの場合)かかるがやむを得ない。
『はじめてのレイアウト』を参考に組版する
松田行正著『マネするだけでエディトリアルデザインが上手くなる はじめてのレイアウト』は、かつて私が別の趣味で本を作っていた頃からのバイブルである(残念ながら現在は絶版のようだ)。本文レイアウトの決め方が具体的に説明されており、ど素人には大変ありがたかった。今回もこの本を参考に本文レイアウトを決定していく。
利益を出すことは考えない
今回はとりあえず本を出したいから出すので、自分のやりたい装丁を優先し、黒字を出すことは考えないものとする。
1. 仕様の決定
四六版、並製本、カバー付
判型は四六版(127/128/130mm×188mm)とする。文章メインの同人誌では文庫(A6)、新書、A5 あたりのサイズが定番だが、なぜ四六版なのか。その方が本物の本っぽいからである。
というのは冗談としても、日ごろ本を読んでいる身からすると四六版は馴染みがあり、かつ同人誌ではあまり見かけない大きさだけに、一度はこの判型で本を作ってみたかった。今回の日記本は読んだ本からの引用が多くなる予定のため、文庫より広々とした版面で組みたいという思いもあった。たまたま四六版の印刷に対応した印刷所を見つけたこともあり、憧れの判型で作ってみることにした。
製本方法は並製とする。予算が許せば布張りの上製本にして函など用意したいところだが、いくら赤字前提とはいえ上製本の印刷は手が出せる価格ではない。
本らしさにこだわりたいので、カバーも付ける。つまりソフトカバー本になる。それもただのコート紙+PP 加工ではなく、触ると紙の手触りがさらさらするような特殊紙を使いたい。もちろんその方が本物の本っぽいからである。本体の印刷所とは別になるが、条件を満たす印刷所を見つけたためカバーも希望通りに作ることにした。
本文用紙は書籍用紙
書籍用紙というのは、詳しいことはわからないが、要するに商業出版されている文芸書で使われているようなほのかに黄色っぽく、軽くて柔らかく、めくりやすい紙である。利用予定の印刷所に良さそうな書籍用紙があったので、これを用いることにする。
本文 13Q、一行 42 字× 15~17 行
本文の文字サイズは 13Q とする。手持ちの書籍の文字を級数表で色々測ってみて、12Q では小さく、14Q では大きいと感じたためである。ちなみに級数表というのはこれである。
さて、基準の文字サイズが決まると本文のレイアウトも仮決定できる。ここで出番が来るのが『はじめてのレイアウト』だ。1Q=0.25mm なので 13Q=3.25mm。この 3.25mm を基準として、天の余白は〇〇字分(3.25mm×〇〇)、小口は〇〇字分、という風に決める。天と小口を決めてやれば地とノドの余白も自然と決まる。
『はじめてのレイアウト』によると、レイアウトは天付きになるほどハードなイメージになり、地付きになるほどソフトになるそうだ。日記本は柔らかい内容なので、天の余白を多めに取る。
ある程度の厚さになるはずだから、ノドの余白は最低 20mm、できればそれ以上確保したい。『はじめてのレイアウト』には小口の余白と行数・行間の設定からノドの余白を割り出す方法も載っているのだが、数字が苦手でチンプンカンプンなので、ここは InDesign で実際に組んでみて様子を見ることにする。
以上の天・小口(そして地・ノド)の余白の仮設定から、ひとまず一行あたりの文字数は 42 字、一ページあたりの行数は 15~17 行になるであろうことがわかった。手持ちの書籍を見てみても不自然な数値ではないようである。