四月総括

 四月は堀辰雄ばかり読んでいた。そんな気がする。四月のいつごろから読んでいたのか? もしかしたら三月だったのか?(そうではなかったと思うけれど) そのあたりは記憶の靄の向こうにありはっきりしない。はっきりさせるために日記を書いているのではないのか。日記をめくればすぐにわかるではないか。そう問う向きもあろうがはっきりさせなくても特に困らないので日記は参照しない。四月は堀辰雄の月だったと思う。

 私は飽きっぽくて気分屋だから、断定は避けたいが、どうやら堀辰雄に惚れ込んでしまったのではないかと判断しても間違いではないと言えないこともないようだ。

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 筑摩書房版の堀辰雄全集(思いがけず私の宝物になった)を買ったのは、気になっていた時にたまたま安い出物を見つけたからだけれども、そもそも気になっていた理由は彌生書房の「現代の随想」シリーズの『堀辰雄集』を読んで良いと思ったからで、『堀辰雄集』を手に取ったきっかけは龜鳴屋という小さな版元の『高祖保随筆集 庭柯のうぐひす』という美しい本に堀辰雄の名が出ていたから、『堀辰雄集』をさっと手に取ることができた理由は家に「現代の随想」が全巻揃っていたからで、なぜ「現代の随想」が揃っていたかといえば去年の十二月に訪れた京都の古書店で『井伏鱒二集』を買い求め、内容もさることながら造本を気に入ってついつい全巻揃いを通販で注文してしまったためだった。このような鎖のどれか一つが欠けても私は堀辰雄を読まないまま一生を終えていたのかもしれないと考えると怖いような気がする。

 四月のまとめをするつもりだったが、四月は十二月からずっと続いていて区切るのが難しいことがわかった。